【徹底比較】トヨタ「ハイエース」VS フォロフライ「F11VS」装備や荷室サイズからパワートレインまで
話題の商用EVバン、フォロフライ「F11VS」。日本の商用バンの王様トヨタ「ハイエース」と、サイズや積載量、気になる燃料代まで、まるごと比べてみました。はたして“買い”なのはどちらなのでしょうか。
初期ロット完売⁉ いま話題の商用EVバン「F11VS」とは
街なかで荷物を運ぶ商用バンといえば、多くの人がトヨタ「ハイエース」を思い浮かべるのではないでしょうか。長年、日本の物流を支えてきた定番中の定番です。
そこへ、電気自動車(EV)で勝負を挑むのが、京都大学発のEVベンチャー、フォロフライの「F11VS」です。2026年1月に販売が始まり、フォロフライは、先行生産分の初期ロット100台がすべて完売し、納車を完了したと発表しています。
ガソリンや軽油ではなく電気で走るこのEVバン、いったいハイエースと比べてどこがどう違うのでしょうか。パワーや荷室、そして事業者が一番気になる“おサイフ事情”まで、じっくり比べてみましょう。
出力はEVが上回る? 走りの心臓部を比べてみる
まずはクルマの心臓部、パワートレインから見ていきます。ハイエースは、標準ボディの「DX・ディーゼル・2WD・3人乗り・5ドア」と、ワイド・スーパーロングの「DX・ディーゼル・2WD・2/5人乗り・4ドア」を比較対象とします(いずれも最安のDXグレード)。
| 項目 | F11VS(2人乗り) | ハイエース 標準ボディDX(3人・5ドア) | ハイエース ワイドSL DX(2/5人・4ドア) |
|---|---|---|---|
| 動力 | 電気モーター | 2.8Lディーゼルターボ | 2.8Lディーゼルターボ |
| 最高出力 | 170kW(231PS) | 111kW(151PS) | 111kW(151PS) |
| 最大トルク | 336N・m | 300N・m | 300N・m |
| 燃料・エネルギー | 電気(82.88kWhバッテリー) | 軽油 | 軽油 |
| 一充電・満タン航続 | 479km(WLTP) | ー | ー |
| 最高速度 | 135km/h | ー | ー |
数値の上では、F11VSは最高出力・最大トルクともにハイエースを上回ります。モーターは低速から力を出しやすい特性があるものの、実際の加速は車重(F11VSは車両重量2250kg)や制御、路面・積載などの条件によって変わります。
いっぽうハイエースのディーゼルも、低回転から力強いトルクを発揮するのが持ち味で、重量物の運搬を得意としています。長年の実績に裏打ちされた信頼感は、大きな安心材料といえるでしょう。
大きさと小回りはどっち? 意外な数字の差
次に、運転のしやすさに直結するボディサイズと最小回転半径を比べます。
| 項目 | F11VS | ハイエース 標準ボディDX | ハイエース ワイドSL DX |
|---|---|---|---|
| 全長 | 4990mm | 4695mm | 5380mm |
| 全幅 | 1980mm | 1695mm | 1880mm |
| 全高 | 2010mm | 1980mm | 2285mm |
| 最小回転半径 | 6.1m | 5.0m | 6.1m |
| ナンバー分類 | 1ナンバー | 4ナンバー | 1ナンバー |
こうして並べると、F11VSはハイエースの標準ボディとワイド・スーパーロングの、ちょうど中間くらいのサイズ感であることがわかります。全幅は1980mmと3台のなかで最も広く、そのぶん荷室にゆとりが生まれています。
いっぽう、最小回転半径はF11VSが6.1mで、大きなワイド・スーパーロングと同じ数字です。全幅1695mmの標準ボディDXは最小回転半径5.0mと取り回しやすく、細い路地の多い街なかでの機動力では一日の長があります。
荷物はどれだけ積める? 荷室と積載量で真っ向勝負
商用バンの主役は、なんといっても荷室です。ここは各車の個性がはっきり出る部分です。
| 項目 | F11VS | ハイエース 標準ボディDX(3人・5ドア) | ハイエース ワイドSL DX(2/5人・4ドア) |
|---|---|---|---|
| 荷室長 | 2690mm | 3000mm | 3540mm |
| 荷室幅 | 1700mm | 1545mm | 1730mm |
| 荷室高 | 1380mm | 1335mm | 1635mm |
| 最大積載量 | 1100kg(2人乗り)※3人乗りは1000kg | 1200kg | 1000kg |
最大積載量は、標準ボディDX(3人乗り)が1200kgと最も多く、F11VS(2人乗り1100kg)、ワイド・スーパーロングDX(1000kg)が続きます。F11VSは普通自動車免許で乗れるバンとしてはクラス最大級の積載量をうたい、荷室幅1700mmとゆとりがあるのも特徴です。
装備の充実度は? F11VS・DX・スーパーGLを比較
商用車というと「必要最低限の装備」というイメージがありますが、F11VSは、シートヒーターやベンチレーション、ヒーター付ステアリングなど、乗用車の上級グレード並みの快適装備を標準で備えます。
ここでは、ハイエースの最安「DX」と上級「スーパーGL」(いずれもディーゼル・2WD)を加えた3台で、おもな快適・便利装備を見比べます。
| 装備 | F11VS | ハイエース DX | ハイエース スーパーGL |
|---|---|---|---|
| オートエアコン | 〇 | ー(マニュアル) | 〇 |
| 運転席・助手席シートヒーター | 〇 | ー | 〇(前席) |
| シートベンチレーション(前席) | 〇 | ー | ー |
| ヒーター付ステアリング | 〇 | ー | ー |
| スマートキー | 〇 | ー | 〇 |
| 360度カメラ(全方位/パノラミックビュー) | 〇 | 〇 | 〇 |
| ディスプレイオーディオ(Apple CarPlay対応) | 〇 | 〇 | 〇 |
ポイントは、ハイエースが2026年2月の改良(9型)で、パノラミックビューモニターや8インチディスプレイオーディオ(Apple CarPlay対応)を全車標準化したことです。最安のDXでも、これらが標準で付くようになりました。
それでもF11VSには、上級のスーパーGLにもない「シートベンチレーション」や「ヒーター付ステアリング」まで標準でそろう強みがあります。DXと比べれば、オートエアコンやシートヒーター、スマートキーの差も効いてきます。標準装備の充実ぶりは、F11VSの見どころといえるでしょう。
先進安全装備で差は出る?
安全面は、ハイエースが2026年2月の改良で最新のトヨタセーフティセンスを全車に標準化し、追従機能付きのレーダークルーズコントロールも全グレードへ広がりました。そのため、DXとスーパーGLの予防安全は基本的に共通です。
| 項目 | F11VS | ハイエース DX | ハイエース スーパーGL |
|---|---|---|---|
| 衝突被害軽減ブレーキ | 〇 | 〇 | 〇 |
| 検知対象(公式明示) | 歩行者ほか | 歩行者・自転車〈昼夜〉・自動二輪車〈昼〉 | 同左 |
| 車線維持・逸脱支援 | 〇(車線維持・逸脱防止・警告) | 〇(警報) | 同左 |
| 追従機能付クルーズコントロール | 〇 | 〇 | 〇 |
| ハイビーム自動切り替え | 〇 | 〇 | 〇 |
| 標識情報の表示・警告 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 360度カメラ | 〇 | 〇 | 〇 |
F11VSは、車線中央を保つ支援や車線逸脱の防止・警告を備えています。車線逸脱防止支援システムには、介入レベルに応じて任意に選べる3つのサポートモードが用意されています。また、インテリジェントハイビームや標識情報の表示、360度全方位モニターも標準です。
いっぽうハイエースも、最新のトヨタセーフティセンスで歩行者に加えて自転車・自動二輪車まで検知し、交差点での出会い頭などにも対応します。車線逸脱はディスプレイ表示とブザーによる警報が中心で、予防安全の内容はDX・スーパーGLで共通。長年培われた信頼性の高さも安心材料といえるでしょう。
本題の“おサイフ勝負”! 3000kmぶんの燃料代を試算
さて、事業者が最も気になるのが「走らせるといくらかかるのか」でしょう。ここでは3000km走った場合の燃料代(電気代・軽油代)を試算してみます。
条件は、ハイエースの実燃費をWLTCモード燃費の80%と仮定しました。F11VSはカタログ電費がないため、公表された航続距離479kmとバッテリー容量82.88kWhから基準電費を約5.8km/kWhと逆算し、その80%にあたる約4.6km/kWhで試算しています。軽油は1リットル160円、電気は東京の夜間電力プランを想定した1kWhあたり28円(いずれも2026年7月の目安)とし、燃料費調整額や再エネ賦課金、充電ロス、基本料金は含めていません。
| 車種 | 実燃費・実電費(試算) | 3000kmの燃料代 |
|---|---|---|
| F11VS | 約4.6km/kWh | 約1万8000円 |
| ハイエース 標準ボディDX | 約9.9km/L | 約4万8000円 |
| ハイエース ワイドSL DX | 約9.4km/L | 約5万1000円 |
試算の結果、F11VSの電気代は約1万8000円。対するハイエースの軽油代は約4万8000〜5万1000円で、F11VSはおよそ4割弱(標準ボディDX比で約38%、ワイド・スーパーロングDX比で約35%)に収まりました。走行距離が延びるほど、この差は積み重なっていきます。
もちろん、これはあくまで一定の条件での試算であり、実際の電気料金プランや走り方、荷物の量によって数字は変わります。それでも、燃料代の安さがEVの大きな魅力であることは確かでしょう。
では車両価格は? 補助金で見える“実質負担額”
「でもEVは車両価格が高いのでは」という疑問はもっともです。ここで効いてくるのが、国や自治体の補助金です。
F11VSは、国のLEVO(環境優良車普及機構)が執行する電動化促進事業の対象で、フォロフライの発表では事業用で最大401万2000円の補助基準額が示されています。
| 車種 | 目安の金額 |
|---|---|
| フォロフライ F11VS(東京都・eフリート試算) | 実質負担額 383万円から ※暫定 |
| フォロフライ F11VS(神奈川県・eフリート試算) | 実質負担額 278万円 |
| ハイエース DX ディーゼル2WD 標準ボディ・3人乗り・5ドア | メーカー希望小売価格 352万8800円 |
| ハイエース DX ディーゼル2WD ワイドSL・2/5人乗り・4ドア | メーカー希望小売価格 369万4900円 |
eフリートの販売では、東京都では国(LEVO)と東京都、eフリートの当社からの販売協力金を含めた実質負担額が383万円から(7月1日時点、東京都の補助金算定の仕切り直しにともなう暫定額)としています。なお、神奈川県では補助金額が上がり実質負担額278万円〜となります。
なお、この表は比べ方の性質が異なる点に注意が必要です。F11VSの金額はLEVOや自治体の補助金にeフリートの販売協力金まで反映した“実質負担額”で、ハイエースはメーカー希望小売価格です。
いっぽう、ハイエースDXディーゼル・2WDのメーカー希望小売価格は、標準ボディの3人乗り・5ドアが352万8800円、ワイド・スーパーロングの2/5人乗り・4ドアが369万4900円です。いずれも2026年1月時点の価格で、保険料、税金、登録料、オプションなどは含みません。補助金を活用したF11VSの実質負担額は、地域によってはハイエースと十分に張り合える水準まで下がってくる、ということです。
燃料代の安さと合わせて考えれば、走行距離が多い事業者ほど、EVという選択肢が現実味を帯びてくるのかもしれません。使い方次第で“買い”の答えが変わる、それが今のEVバン選びの面白さといえそうです。
